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『福島県災害現地研修の開催』

相談カテゴリ: 不動産鑑定士社会福祉・貢献活動

弊社代表である佐藤麗司朗先生が、東京都不動産鑑定士協会・相談事業副委員長兼実行委員長として、企画、調整をなされた「福島県災害現地研修」の報告が、会報「かんていTOKYO」No.86に掲載されました。
掲載写真と共に内容をご紹介したいと思います。

『福島県災害現地研修の開催』
相談事業委員会副委員長 佐藤 麗司朗

平成26年度の当士協会の事業計画において「大規模災害に対応するための支援活動の充実」が掲げられ、3月14日に行われた相談事業委員会にて「東日本大震災の津波被災地・原発事故被災地の状況把握等を行い、支援活動を充実させるための課題や求められる専門家としての不動産鑑定士の役割等を把握するとともに、相談員のスキルアップを図るべく、福島県災害現地研修を行う」ことが決定されました。
構想から約半年の準備期間を経て、現地である福島県不動産鑑定士協会、福島大学はもとより、阪神淡路大震災の折、復興過程でご活躍なされた近畿不動産鑑定士協会連合会(滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県)、静岡県不動産鑑定士協会からもご賛同・ご参画を頂き、7都府県の不動産鑑定士が一堂に会し、福島県災害現地研修を開催致しました。

1.開催日時:2014(平成26)年10月3日(金)~10月5日(日)
2.日程
2014年10月3日
(7:00)
新宿駅西口工学院大学前に集合。移動中の車内にて、福島県の被災状況・最新情報について炭野副委員長より説明。
(12:30)
福島駅西口到着、福島県不動産鑑定士協会、近畿不動産鑑定士協会連合会、静岡県不動産鑑定士協会、福島大学関係者と合流。バスでふくしま中町会館へ移動。
(12:45)
福島県土木部新関永主幹兼副課長より災害公営住宅の建設について説明を受ける。
(13:30)
南相馬市役所へバスにて移動。福島大学間野特任研究員より南相馬市の概況について説明を受ける。
(15:00)
災害公営住宅建設現場を視察。南相馬市建築住宅課鈴木隆係長より施設概要の説明を受ける。福島テレビから取材を受ける。
(16:00)
南相馬市桜井勝延市長の講話。
(17:00)
ロイヤルホテル丸屋にて夕食。テレビ放映確認。南相馬市内のホテルに分宿。

2014年10月4日
(9:00)
ホテル出発。途中、浪江町総務課小林直樹副主査と合流。
(9:30)
津波被災した請戸小学校、浪江町中心市街地を視察。酒田地区の田んぼ実証栽培にて4年ぶりとなる稲刈り現場へ赴く。
(13:00)
介護老人施設「貴布祢」にて昼食後、浪江町役場へ移動。
浪江町総務課小林直樹副主査より浪江町の現状と課題について説明を受け、意見交換。
(18:00)
辰巳屋にて不動産鑑定士交流会(無料相談会終了後の福島県不動産鑑定士協会会員が多数ご参加)
閉会後、東横イン福島駅東口Ⅱに移動、宿泊。

2014年10月5日
(9:30)
福島大学へ向けバス移動。
(10:00)
福島県災害現地研修ミニシンポジウム「災害時における不動産鑑定士の役割とは」
うつくしま福島未来支援センター(FURE 2階大会議室)
第1部:基調講演:鈴木浩先生(福島大学名誉教授・福島県復興ビジョン検討委員会座長) 第2部:7都府県不動産鑑定士による意見交換(※敬称略)
司会:佐藤麗司朗(東京会)、コーディネーター:吉田雅一(東京会)
パネリスト:丹波史紀(福島大学准教授)、稲野邉俊(東京会会長)、炭野忠彦(東京会)、小橋達夫(福島県士協会会長)、石田英之(福島県士協会)、足立良夫(近畿連合会・危機管理対応委員)、後藤雅文(静岡県士協会会長)

(12:30)
福島駅西口到着、他県士協会バス下車
(19:00)
新宿駅西口到着 解散

3.結果と所感
私の母方の親族は福島県に今なお在住しており、幸いにして直接的な被災はなかったものの、私の母の墓は倒壊しました。当時、親族からの電話で状況は確認できたものの、石材も不足して2011年の年末近くになってようやく再建できました。
震災の直後、私は東京へ避難された方たちを対象とした各避難所(東京ビッグサイト、グランドプリンスホテル赤坂、東京武道館、味の素スタジアム)における無料相談会に参画しました。
親族と同じ親しみ深い方言の方々が、発災時のことを振り返り、情報が錯綜する中で逃げ惑う様子を涙ながらにお話してくれました。

初動ともいえるこれらの相談会の段階では、不動産鑑定士はもちろん、弁護士や税理士も何もできず、話を聞いて寄り添うことしかできませんでした。悔しい思いとともに、無力感に襲われたのを覚えています。
その後も災害復興まちづくり支援機構を通じて、被災三県で開催された地元学識経験者及び各専門士業の復興協議会へ出席し、現在は都内に避難されている被災者の方の相談会・交流会への参加を定期的に行っています。

震災から約4年が経過し、災害復興まちづくり支援機構を通じて支援を行っていた岩手県大船渡市では、防潮堤の再建、防災集団移転促進事業の進捗など復興の息吹が力強く感じられるようになりました。
7月には囲碁の全国的、世界的な組織である日本棋院のご協力の下、大規模なお祭りをすることができました(同時に無料相談会を併設しました報告は船山副会長がなされます)。
一方、震災と津波災害、福島県第一原子力発電所の原発事故という3つの複合災害にあった福島県では、依然として中間貯蔵施設の設置すらままならず、仮置き場が不足する中で除染作業も遅々として進まない状況です。

【底の抜けた請戸小学校の体育館】

被災者の方に寄り添い、他士業や他県不動産鑑定士と交流する諸活動の中で、私が一番危機感を持ったのは、近年大規模災害を経験していない東京の不動産鑑定士は、災害に対する危機意識が低いということでした。
東京会として行っている災害支援に関する活動は相談事業委員会が行っていますが、会務としての性質上、ごくごく限られた担い手によって運営されており、首都直下型地震が起きた場合には、支援活動などとても対応できないであろうということでした。
そのような中、冒頭に述べた当士協会の事業方針が示され、相談事業委員会として研修を企画することとなりました。放射能汚染という前人未到の現場で奮闘している福島県不動産鑑定士協会の方々と交流することによって、東京会の中で危機意識が稀薄な「災害に対して専門家として備える」という活動に少しでも関心を持って頂きたいとの思いでした。

本来的には東京会の約2,000人に参加者を募るような形で開催したかったのですが、予算や委員会規定によって相談事業委員会の諸活動に参画している方を中心に募る形になってしまいました。
企画に当たっては、福島復興の第一線でご尽力なされている福島大学の丹波准教授に原発被災地の現状把握、課題等に関する講演等についてご相談し、既に福島大学として関与していたスタディツアーなどを参考に全体的なコーディネートをお願い致しました。

スタディツアーを企画しようにも、エリア的に運行していないと大手バス会社からはお断りされてしまうこともありました。挫けることなく多くのバス会社から見積もりを取得しつつ同時並行して、震災復興について意見交換させて頂いていた現地である福島県不動産鑑定士協会の石田英之先生と、近畿不動産鑑定士協会連合会でご活躍中の櫻井美津夫先生にご賛同、ご参画を頂けないか連絡を致しました。
4月には神戸にて近畿不動産鑑定士協会連合会が主催するシンポジウム「津波から人命を守る」に参加して、東京会としての本研修の主旨をお伝えしました。そのシンポジウムで出会えた静岡県不動産鑑定士協会の後藤雅文会長は東海地震、南海トラフ巨大地震に備える活動を推進なされており、本研修会にもご賛同を頂くことができました。

【沿岸部視察】

結果として、7都府県不動産鑑定士が一堂に会し、ともに被災地の現状を把握し、意見交換し、課題を共有するという当初の想定を超える企画になりました。
稲野邉会長からは当初よりご理解を頂き、理事でもない私が理事会に出席した折には「これこそ公益社団法人としての取り組みである」と力強い後押しを頂きました。
事務局の氏家課長代理には参加者募集から当日までの準備、吉野次長には直前の微調整、研修3日間にわたり随行を頂き、事務局の方々にご尽力を頂きました。大変感謝しております。
研修を振り返ると、あまりにも内容が濃すぎて限られた紙面ではお伝えできそうにありませんが、印象的だったことを綴りたいと思います。

南相馬市災害公営住宅の建設現場では福島テレビの取材を受け、同日の夕刻に「不動産鑑定士が災害公営住宅を視察」というタイトルでオンエアーされたのを確認でき、参加者は大いに盛り上がりました。

【福島テレビにて放送】

【南相馬市災害公営住宅】

南相馬市桜井市長からの講話では、震災当時、情報の乏しい中で、自治体の長としてどのように覚悟をし、決断したかについて直立不動で30分以上もの間お話を頂きました。
冒頭「現地に来てくれてありがとうございます」と深々と頭を下げられたことが印象に残っています。
現場主義とバランス感覚が重要であると学びました。

【南相馬市役所庁舎における市長講話】

B級グルメ「浪江焼きそば」で名を馳せた浪江町では、いまだに全町民が避難を続けており、町内で営業中の店舗はローソンとガソリンスタンドの2店のみ。ローソンは赤字を覚悟の上で除染作業員の方々に温かい食事を提供したいとの思いで営業されているとのこと。
人がおらず、手入れのできない庭木や街路樹は、人類の営みなど我関せずとばかりに枝葉を伸ばし、人工的な建造物や道を飲み尽くしつつある様を見ました。想像はしていたものの、これだけ広大な土地に人が住めないという異常事態を肌で感じ、参加者一同言葉を失ってしまいました。
この浪江町の視察と小林副主査のお話からは、「安全」と「安心」との違い、分断された住民と故郷を繋いでいくことの難しさについて深く考えさせられました。

【浪江町役場意見交換】

酒田地区の実証栽培が行われている田んぼでは、4年ぶりとなる稲刈りを見学することができました。
当日は環境大臣とともに関係省庁の方々もおられ、荒れ果てた大地に囲まれた希望の黄金を見る事ができました。

【酒田地区実証栽培】

移動中のバス車内においても見聞きしたことを隣席同士が話し合い、交流会や最終日における意見交換でも、不動産鑑定評価に関する歯に衣を着せない議論がなされました。
この研修で何か結論が出せるわけではなく、専門家として大規模災害に備えるためのスタートとしての研修ではありましたが、東日本大震災を通じて「不動産鑑定士の社会的な役割、可能性」について、阪神淡路大震災を体験し、復興を支え続けている不動産鑑定士と、今も当事者として直面している不動産鑑定士、東京会を含め各地で迫り来る大規模災害を迎え撃つ立場の不動産鑑定士が3日間、共に現場で考え、意見を交換し、課題を共有する機会を持つことができました。
参加者を中心に、災害支援の在り方、首都直下型地震に備える諸活動について、研究・実践していくキッカケになってくれればと切に願います。

【不動産鑑定士交流会】

この筆を執っている前日(11月29日)は、災害復興まちづくり支援機構の設立10周年の総会であり、同時に開催された災害対応支援士業連絡会全国交流シンポジウムに運営委員として参加してきました。
同支援機構の代表委員で首都大学東京の名誉教授、現在は明治大学大学院特任教授であられる中林一樹先生から「次の10年は、首都直下型地震が起きた場合における東京の受援体制を創りあげる段階である」とお話がありました。
支援活動に精通した如何に優秀なスペシャリストであろうと、首都圏における未曾有の大災害を前にしては被災者となってしまうだろう。平常時である今のうちから日常的にコミュニケーションをとり「顔の見える関係」を構築する事こそが事前にできる復興であるとのお話を頂きました。

不動産鑑定士という専門職業団体に当てはめ、義援金の送付だけで終わらない「受援体制の構築」は、全国的に展開しなければならない課題であるとの思いをさらに強くしました。
さらに、相談事業委員会で8月に会員向けに開催した「災害に係る住家被害認定調査(※)」のための研修会について、発災直後から不動産鑑定士という専門職業家として自治体に対して支援業務を行えるよう、研修の内容を充実させて実施を継続し、機能できる体制を構築しなければならないと感じています。

【7都府県不動産鑑定士意見交換】

※「災害に係る住家被害認定調査」
災害対策基本法第90条の2に基づき、市町村長が「罹災証明書」を発行するために行われるもので、被災者は「罹災証明書」の発行を受ける事によって、
①被災者生活再建支援金、義援金等の給付
②住宅金融支援機構融資、災害援護資金等の融資
③税金・保険料・公共料金等の減免・猶予
④災害救助法に基づく応急修理の支援
を受けられるようになります。

以上、弊社代表による報告書の全文です。
専門家として大規模災害に備えていくことの重要性を力強く訴えておられます。
今週の週末には、阪神淡路大震災から20年が経過した神戸で、大規模なシンポジウムが開催されます。
弊社代表も東京の不動産鑑定士を代表して、学識経験者や他の専門家と共に参加なされます。

更新日:2015年4月4日

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